letter
 — Vol.07

竹本吉輝から 林厚見氏へ4

November 15th, 2013

林くん、
久しぶりだね。会ってはいた(いる)けど、往復書簡では。改めてよろしく。

先日は、北青山の(前回の往復書簡で林くんが送ってくれた写真の)オフィスを案内してくれて、ありがとう。まさかなほど(もうこれでもか、と)東京の木をたくさんたくさん使ってくれてて。しかも、愉しみというか遊びゴゴロとういか、林厚見的にいえば、「快楽サステナブル」な感じで。率直に、北青山のようなハイエンドな物件整うエリア、そうした全体空間に向き合うカタチで(外直結で)、あのような無垢で小洒落たオフィスができるとは(願ってはいたけど)思ってはいなかったよ。しかしながら、実際にあの様な空間ができあがってみると、会議室の木枠やオフィス家具なんかも含めて、まだまだたくさんできることがある(できたほうが、見栄えも含めてより豊か)と思うのも事実。まだまだニーズがない(顕在化してない)から、なんてことを理由に、作り手側供給側が躊躇しててはいけないな。と、これまた率直に。
あと、縁あって東京の木と日々過ごすことになってもらった人たち(社員の方々)には、ぜひ、多摩の(本物の)森の空間に足を運んでもらいたい、と、切に思ったよ。こちらも、躊躇することなく実現したい(させたい)、です。

森の(ある社会の構造みたいな)こと、最初は、知ってもらう、感じてもらう的文脈で(十二分に)いいけれど、いつの日か、ハードとソフト、マテリアルとそのオリジン(やストーリー)、みたいな二元論的分断を他所にした、当ったり前に「ひとつの」空間価値が提供できないかな。以前、講演後のパーティで会ってお話した(アメリカ人)哲学者が「inter- は離れてることが前提で、それをつなげる(間を埋める)という意味。でもそうじゃない。私達は最初からつながっている。そしていまもつながっている。connected。そのことを忘れていたり、気がついていなかったりするだけだ。だから、無理につなげたり埋めたりしなくたっていい。想い出すだけでいい、感じるだけでいいんだ」って云っていたように。森(との同期)を、生命として「想い出す」ことができて「感じる」ことができる、そうした空間を。(できれば)一緒に。

前回、「僕らの共通点はある種のロマンに向かって、その手段を割と言語化して合理的に考えて動こうとするところではないかと思っているんだけど、どうなんだろう」ってあったけど、これ、ホントそうだね。いや、そう在りたいと願ってることは確実にそうだ(そこは言い切ってもよいかと)。先日のエッセイで、「幻想のロマンティックな」文脈を紹介してたんだけど、僕らは、そんな幻想(や妄想)を構想化し、具体的合理的に実現する、それもカタチとして整えることが目的ではなくって、そもそもの幻想(ロマン)を浮き彫りなものとして、見える化して、伝えて、広げて、続けて、みたいなことを志向する人種なんだろう、って思います。connectedな感覚を想起させる、そんなロマンティックな空間価値を、それこそ、connected accountで示す、みたいな。しかも、connected sociallyに、みたいな(しつこいな)。

青山居については、近く、阿部(ちゃん)から詳細に報連想させてもらうと思います。まさに「空間と人間が、時間とともに呼応して変わっていくのがいい、みたいなこともあるよね、とか。
もしかしたらテーマとかメッセージとかも、あればいいってもんじゃないのかもしれない」という精神性をもって(阿部は、serendipityだ!と騒いでます)、あの空間を眺め(妄想し)ているので、ぜひとも一緒に、「ある種のロマンに向かって、その手段を割と言語化して合理的に考えて動」いていきたい。です。引き続き。ひきつづき。

photo by 井島健至

プロフィール紹介

林厚見 Atsumi Hayashi

株式会社スピーク共同代表。「東京R不動産」では主に事業面のマネジメントを担い、他に不動産開発・リノベーション等における企画・プロデュース、新島のカフェ・宿「saro」の経営などを行う。1971年東京生まれ。東京大学工学部建築学科、コロンビア大学建築大学院不動産開発科修了。マッキンゼー、不動産ディベロッパーを経て2004年吉里裕也と株式会社スピークを設立。共編著書に「だから、僕らはこの働き方を選んだ」「東京R不動産2」「toolbox」等。

竹本吉輝 Yoshiteru Takemoto

1971年神奈川県生まれ。横浜国立大学国際経済法学研究科修了。外資系会計事務所、環境コンサルティング会社の設立経営などを経て、2009年、株式会社トビムシ設立。10年、ワリバシカンパニー株式会社の設立に参画。13年、株式会社東京・森と市庭を設立、代表取締役就任。専門は環境法。国内環境政策立案に多数関与。同時に、財務会計・金融の知見を加味した環境ビジネスの実際的、多面的展開にも実績多数。立法(マクロ政策)と起業(ミクロ市場)で双方の現場を知る。