letter
 — Vol.10

林厚見氏から 竹本吉輝へ5

January 10th, 2014

あけましておめでとうございます。
今年の年始は実家が留守だったので、ちょろっと京都に行ってきました。
すき焼きでカロリーとりまくって鴨川走ってカロリー使いまくると息巻いていったものの、結局インプットしすぎて体が重くなり、ぷらぷら歩いてばかりいました。
しかしやっぱり京都は東京と違って、水辺に無駄な手すりがないのがよいね。
高瀬川も鴨川も、手すりが続いてたら冷めまくりですよ。

あの街は、家や町並みも、店や商いとの関わり方も含めて、快楽の持続のために必要な、仕組みやコモンセンス、あるいはリスクテイクや我慢をわかってる感じがする。
そこで育つ人たちはそれを自然に学び取っている。
まあ、いいことばかりじゃないんだろうとは思うけど、もう東京から離れたいって人はいても、もうええかげん京都から離れたいって人はあまりないみたいだし。

さて、僕らが王道に行かずにいつも隙間に行く、って話が出ていたけど、竹やんの言うように、別に王道は嫌い、ってわけでは確かにないんですよね。
ただ僕の場合はナルシストなので、”自分ならでは”感が欲しいのは確かで、「これはおれしかできないっしょ」という役割を見つけると俄然やる気がわくのです。
才能不足ゆえに、それが隙間になってしまうのかもしれないけど。

実は僕は以前ずっと、仕事をもらうときにも「この仕事は、僕らがやるのがベストです」
と自信を持って言えるものでないと、堂々と自分を売り込めなかった。
もっとうまくやる人がいるかも、と思うと弱気になるところがあった。
でも今は、それじゃだめだとも思うようになった。
思いが強ければ自分が生み出すものをどんどん高めていけるのに、それを放棄して自分に限界を設定してたらしょうがないよなと。
仕事の質や満足度なんて、スキル以上にコミットメントや関わり方が大きく左右する。
「君には僕が一番合っている」「君にとってベストな男は僕のはずだ」と言うよりも「とにかく僕は君が好きなんだ」と言う方がいいわけで。
受け取り方や関係のあり方で価値は変わる。そんな当たり前のことを最近よく意識しております。

考えてみれば、「自分ならでは」「おれにしかできない」みたいなものも、最初から存在するものじゃないよね。
何かに興味を持って、その最初の時点では「自分ならでは感」なんて全然なくても、のめり込んで、自分なりの感覚や思いで走っていけば「自分ならでは」になっていく。
それは地域再生の話なんかでも同じかもしれないよね。
”ならでは”感とか”強み”っていうのは、過去のストックからでなく、むしろ動くこと自体によってつくられると思わないといけない。

ということで、やっぱり何歳になっても、自分にできることは何かとかまじめに考えずに、やってみる、新しい何かをやっていくしかないんだ、と思うわけであります。
そしてそのためには基本的にやんちゃでなければいけないんだ、と思うのであります。
まっとうだけど変、と言われることにも、隙間好きで路地マニアな半端なソーウツ中2野郎であることにも、自信を持つべきだと思うわけであります。

それから三浦三崎の件は、”自然の中で、visionが生まれる場所”、をつくりたいという漠然としたイメージ以外は詰まっておりません。
もしかしたら奥多摩の方がいいかも、と思ったりもします。
なので、近々また奥多摩、行きます。色々妄想させて頂きつつ、なぜか正月に渓流釣りをやってみたくなったので、道具買っていきます。よければご一緒に。

プロフィール紹介

林厚見 Atsumi Hayashi

株式会社スピーク共同代表。「東京R不動産」では主に事業面のマネジメントを担い、他に不動産開発・リノベーション等における企画・プロデュース、新島のカフェ・宿「saro」の経営などを行う。1971年東京生まれ。東京大学工学部建築学科、コロンビア大学建築大学院不動産開発科修了。マッキンゼー、不動産ディベロッパーを経て2004年吉里裕也と株式会社スピークを設立。共編著書に「だから、僕らはこの働き方を選んだ」「東京R不動産2」「toolbox」等。

竹本吉輝 Yoshiteru Takemoto

1971年神奈川県生まれ。横浜国立大学国際経済法学研究科修了。外資系会計事務所、環境コンサルティング会社の設立経営などを経て、2009年、株式会社トビムシ設立。10年、ワリバシカンパニー株式会社の設立に参画。13年、株式会社東京・森と市庭を設立、代表取締役就任。専門は環境法。国内環境政策立案に多数関与。同時に、財務会計・金融の知見を加味した環境ビジネスの実際的、多面的展開にも実績多数。立法(マクロ政策)と起業(ミクロ市場)で双方の現場を知る。