Dirt Bag 多様性の在り様

年末。忘年会シーズン。トビムシも違わず忘年会。地域に(先のエッセイ、Shotgunさながらに)拡散しているトビムシの面々、2名の欠席者がでるも、グループ会社から1名が飛び入り、合計7(男4女3)名での開催。その宴の場で(少人数ながら)改めてトビムシは(欠席者を含め)多様性に富んでいるな、と認識する。出身学部は、農学、経済学、経営学、法学、社会学、文学、人間科学、言語学。学んだ場所も、関東、関西、信州、沖縄、米国、英国。趣味も、釣り、自転車、空手、アニメ、ローラーブレード、野球、演劇、らっきょう。性格も(たぶん)、ざっくり系、細かい系、抽象系、具象系、思考系、肉体系、論理系、ひらめき系、厳格系、穏やか系などなど。僕自身が(最終人事権者として)多様性を目的化して、こうした面々を仲間に引き込んだ記憶(実感)はない。誰かがいっていた、人事は好き嫌いでしろ、的なことについては、実際、そう思うこと少なくないけれど、その結果、同一性均一性が高まってしまうのでは、という(安直な)予感もあった。が、そんな予感を他所に、(少人数ながら)多様性に富んだ顔ぶれになっている、という事実に(最終人事権者として)胸をなでおろしたりする。そして、異なるみんなでひとつのことを為そうとしてる、そんな景色に勇気づけられたりする。

東京・森と市庭に出資してくれているR不動産の代表、ヨッシーこと吉里裕也氏が、以前、一緒に呑んでる時、「社員の多くが建築系だと、同一性均一性が高まったりしないの?クリエイティビティの広がり、多様性が損なわれたりしないの?」という僕の(安直な)質問に、こう応えた。「そもそも建築は、デザインから、素材、構造計量計算、法規、行政手続その他、文系的要素から理系的要素、そしてアート的要素を包含した学問だから、建築系が多いということで多様性を損なう、ということはないと思う。そもそも、うち(R不動産)にきたいといってる時点で変わってるしね」と。なるほど。専門性を要する仕事(組織)がゆえ、メンバーの専門的バックグラウンドの同一性はある程度高くならざるを得ない、に関わらず、メンバー自身の感性的多様性は阻害されていない(ということに経営が自覚的な)んだ。実際、同社の若者は内(面)外(面)とも多様性に富んでるようにみえる(その詳細実態は、共同代表のもうひとりである林厚見氏に、往復書簡で聞いてみよう)。魅力的なプロジェクトや魅力的な組織の在り様を現しつづけるR不動産、だけにやはり。と思う。

実際、多様性の担保が組織人事の目的そのものではないにしろ、魅力的な組織はどこも多様な感性が集まっている、と、推察する。ただし、魅力的な組織≒多様な感性、だからといって、多様な感性の獲得を目的化した組織が魅力ある組織か、というのは、post hoc fallacy(因果の誤謬)よろしく、なわけで。やはり、仕事は、(当たり前だけど)組織やプロジェクトの有するミッションや哲学(みたいなもの)への深い共感や尊敬の念(みたいなもの)でしっかりつながりある人が集まってすべきで。そして、その人たちの感性が(可能な限り)多様である、ということが大切なんだ、と思う。僕らは、これからも多くの人と多くの地域で(組織的同一性を問わず)協働していくことになるのだけれど、このこと、改めて心に留めなければいけないな。

先頃、僕も発起人に名を連ねるNPO「いい会社をふやしましょう」のシンポジウムで、登壇したパタゴニアの辻井さんがこんな話しをしていた。「イヴォン(パタゴニアの創業経営者)が最近よく云うんです。『パタゴニアはスポーツウエア(注;スマートな、といったような意味)の会社になっている。頭のいい社員が増えている。以前はもっとDirt Bagを持ち歩く輩(いろんな所にしょっちゅう旅に出ているため、いつも鞄が汚れてる人。遊び心ある旅人的人材として、パタゴニアでは極めてポジティブな存在)がたくさんいた。いまこそ、そうした仲間が必要なんだ』って」。おそらく、Dirt Bagを持ち歩く人たちは、その(Dirt Bagを持ち歩くという)現象絵姿に同一性はあっても、みな、様々な感性を有しているだろうし、そんな感性の異なりを現すことに躊躇しないに違いない。もちろん、パタゴニアのミッションにコミットしていることは云うまでもなく。
僕らも、いろんな人との出会いを大切なものとして、いろんな場所で、僕らの営みを続けられればいいな。人と異なる自分をみつめながら。自分と異なる人を受入れながら。Dirt Bagを背負って。

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