憧れ I respect you

僕には、年上の友人がいる。もちろん、同い歳の友人もいるし、年下の友人もいる。けれど、年上の友人、は、それ以外の友人と異なり、(心の中でそう思うのはいいけれど)自ら公言するのはやや(どころではないほど)憚れる。自身の体育会的気質もあるけれど、みな、こういう大人になりたい、こういう歳の重ね方をしたい、と思わせてくれる、憧れの人、だから。前回のブログで紹介した高橋寛治さん。ずっと前のブログで紹介した(渡米した両親の話しを聴かせてくれた)人、みな、僕自身20年30年経った時に、この人たちのように、人や世の中に向き合うことができたら(本当に)いいな、って思う人たちで。そして今日も、そんな年上の友人のところ(大阪)へ向かっている。僕は、その年上の友人が経営する会社の非常勤取締役を担わせてもらっていて、月に一回訪問、取締役なのに、いつも大切なことを学ばせてもらっている(ちなみに、同社は間もなく100年企業となる、とても素敵な、とても年上の会社だ)。僕は、そのあり難い関係性を想うと、いつも涙が出そうになる。いつもいつも、感謝せずにいられない。

そのひとり、長谷川敬(ひろし)さん、と数日前に会食を愉しむ。長谷川先生(と僕は呼んでいる)は、その直截的な紹介としては、僕たちトビムシの大家さん、で、形式的紹介としては、長谷川敬アトリエの代表、の一級建築士さん、で、実際的な紹介としては、トビムシ創業以前からの支援者であり、とてもとてもあり難い、感謝してもしきれない、恩人、だ。建築家としての実績を多数お持ちであることはもちろん、東京の木で家を造る会緑の列島ネットワークなど、暮らしに棲み家に木を取り入れることの大切さ素晴らしさ、そして尊さを伝えるための活動を行ってきた、いまなお行い続ける、クリエイティブでブレのない、好奇心が強く勉強好きな、童心ある素敵なおじ様。その素敵さ(変態さ?)の現れの(極)一例を紹介すると、彼は、なんと半世紀近く前に(大学院修了直後に)渡米、建築家パオロ・ソレリに師事し、あの伝説の(って、いまなお変化し続けている)実験都市、アーコサンティの始動(!)に携わったりしている。
そんな長谷川先生は、いつも僕にいろいろな質問をする。ご自分の話しは、尋ねればもちろん躊躇なく応えてくれるけれど、自分からはほとんどしない。で、僕のような若輩者の意見に、常に真摯に耳を傾ける。いや、本当に聞きたくて(しょうがなくて)聴いてる、そんな感じだ。そして、本をよく読む。僕が(ご一緒させて頂いている)オフィスに本を持ち込むと、「竹本さん、その本、見せてもらっていいですか」と言って、いつもそして何冊も借りていく。で、必ず、読んだ感想や意見を僕に話し伝えてくれる。その時も、ご自身の意見よりも、僕の意見や感想を聞く、ということの方が多い。ご自身、歩くリベラル・アーツみたいな人、なのにかかわらず。実際、数日前の会食でも、僕が年末にブログで紹介したトマ・ピケティの「21世紀の資本」を既に読まれていて、その意見や感想を話して。「結局、竹本さんが説明してくれた内容だったよ」と笑いながら、楽しそうに嬉しそうに。そして、ご自身が建築設計された家々に、いま、改めて向き合われている。「若い時に造っちゃった、いま思うといろいろ上手くなかった家々を、この歳になって見まわってるんですよ。いまならまだ直すことができるから。」と、同じく、楽しそうに嬉しそうに。
お酒を嗜み、読書を楽しみ、年下の友人との対話を愉しむ。そして、自らの過去に未来志向で対峙する、向き合うことのできる、78歳。本当に、こんな78歳になれたら、で在れたら、と。

僕は、年上の友人に恵まれている。彼らから預かった大切なモノコトは、彼らにお返しするのではなく、いつか必ず、僕のことを年上の友人と思ってくれる年下の友人に預けたい、渡していきたい、と想い思う。今日、大阪の地できっと預かるであろう大切なモノコトも、その大切な一つとして。いつか必ず。