letter
 — Vol.11

竹本吉輝から 林厚見氏へ6

January 24th, 2014

林くん、
この書簡、札幌千歳行きの飛行機の中で書いていて。そういえば、R不動産って、九州には福岡と鹿児島にありつつ、北海道にはなかったような。そんなご縁なさげな(?)北海道、遠くなく、札幌その他もろもろへ、仕事(あるいは私事)で同行できたら面白いかも、と想いながら。

先の書簡、「”ならでは”感とか”強み”っていうのは、過去のストックからでなく、むしろ動くこと自体によってつくられる」という箇所をとても興味深く読んでいて。
そのこと、本来的にはその通り(どころではない程にその通り)でありつつも、多くの場合、ストック的経験的思考パターンが先ずあって、その思考パターンを基礎とした日々の行動があって、そうした思考と行動のストック的結果的なモノとしてキャリアが(自己制御不能な力学にも強く影響を受けながら)あって、同キャリアの中で形成された専門的スキルがあって、同キャリアとスキルに対する外部評価と内部評価(ポジティブには自信とか誇りとか、ネガティブには固執とか諦めとか)があって、それを受けた思考パターンと行動があって、、、というのが常だと思う。
だから、なかなか、その螺旋から脱却するのは難しくて。特に(螺旋の入口たる)思考パターンからの脱却が。ストック的経験的思考パターンそのものを変えることを思考するのは、やはりストック的経験的思考パターンそのものなのだから、ある意味、当然に難しい(ていうか、無理)。
だから、行動するしかない。行動し新しい衝撃を脳に与えるしか、この螺旋から脱却する、新たな世界(観)を形成する、そこへの道程を築く術はない。
だから、「やっぱり何歳になっても、自分にできることは何かとかまじめに考えずに、やってみる、新しい何かをやっていくしかないんだ、と思うわけであります。」と思うわけであります。

もちろん、新しい事業を新しい座組で新しく為す、のは、本当に大変なことで。
だから、仮に新しい事業や領域であっても、同じ座組で同じパターンで、さらには既存事業とのシナジー創出、とかいって、既存の(ストック的経験的)事業にフックをかけながら、既存の事業や領域的に為す、という傾向にあり、結果的に、実は、「新しい何か」ではない、「かつて(から)あった何か」的なモノに陥りがちなんだと(つまりは、ストック的経験的思考パターンの螺旋から脱却できないと)、それこそ、ストック的経験的に思うわけであります。
だから(本日5回目)、「新しい何か」を実現するには、「基本的にやんちゃでなければいけないんだ、と思うのであります。」という林厚見仮説に、完全に同意するのであります。好奇心でもいいし、直感でもいい。あるいは快楽的(エピキュロス学派的な知的快楽でも単なる快楽)でもいい。そうした何らかの契機に「やんちゃ」に反応し、そして実行に移す、ことが大切なんだと思うわけであります。
なんて(ちょっと)真面目に思いながら、トビムシの今後の在り様に照らしながら、到着後の気候(寒さ)を想像心配しながら、高度10000メートル超の上空にありながら、これを書いているのであります。

で(いきなり)、渓流釣り、ぜひ!
3月上旬にみなで泊まりに来てもらうのとは別、2月中に、ゆっくり奥多摩の地で語らいたく。森に入りながら、廃校廃旅館を眺めながら、そこに身をおきながら。そして、「新しい何か」を想像しながら。

プロフィール紹介

林厚見 Atsumi Hayashi

株式会社スピーク共同代表。「東京R不動産」では主に事業面のマネジメントを担い、他に不動産開発・リノベーション等における企画・プロデュース、新島のカフェ・宿「saro」の経営などを行う。1971年東京生まれ。東京大学工学部建築学科、コロンビア大学建築大学院不動産開発科修了。マッキンゼー、不動産ディベロッパーを経て2004年吉里裕也と株式会社スピークを設立。共編著書に「だから、僕らはこの働き方を選んだ」「東京R不動産2」「toolbox」等。

竹本吉輝 Yoshiteru Takemoto

1971年神奈川県生まれ。横浜国立大学国際経済法学研究科修了。外資系会計事務所、環境コンサルティング会社の設立経営などを経て、2009年、株式会社トビムシ設立。10年、ワリバシカンパニー株式会社の設立に参画。13年、株式会社東京・森と市庭を設立、代表取締役就任。専門は環境法。国内環境政策立案に多数関与。同時に、財務会計・金融の知見を加味した環境ビジネスの実際的、多面的展開にも実績多数。立法(マクロ政策)と起業(ミクロ市場)で双方の現場を知る。