志をともにするたまに会う人との話

池田紀行さんと、「地域のマーケティング」放談。

2002年に池田紀行さんが若気の至りで書いた本を読んだ竹本が、深夜に熱いラブレター(メール)を送ったことがきっかけで、「イケ」「タケ」と呼び合うともだち同士になった二人。久しぶりに会って、デジタルマーケティングの潮流から、地域のマーケティングのあり方、これからの生き方まで、ゆるく語らいました。
(この対談は2014年9月に行われました。)

第6回 世の中を変えるPR

池田

でも、多くの人はそんなに目的的に生きてないからね。
例えばさ、夜のニュース番組とかで、
新橋を歩いているサラリーマンの人に、レポーターが
「突然ですが、お父さん、幸せですか?」なんて聞いて
「ええ?幸せかどうかなんて考えたことなかったなー、
 うーん、でも幸せなのかなあ・・・」なんて言っていると、
「お前は自分が幸せかどうかも答えられないのかすぐに!」
なんて思うのよ。

竹本

ははは(笑)

池田

ようは、
そういう人たちはターゲット外なわけでしょ。
目的的に生きてない人はさ。
なんとなくこのままで本当にいいのかなって
都市で悩んでいる人たちが、
地域にとって移住とかのマーケティング的には
潜在的なターゲットになる。

竹本

うん。

池田

多くの人たちは、簡単に移住できないけどね。
俺も、仕事が居住地を既定してしまっている。
思い込みもあるかもしれないけど。
でも、前向きな10代、20代の若者は、
いい学校出ていい会社はいって綺麗なお嫁さんもらえて
っていう成功モデルがなくなっている今、
最初から違う道を歩もうっていう子が多いわけじゃん。
そういう人たちはつながりやすいから、
恒常的につながって活かせばいい。

竹本

そうだね。
それだけ世の中に兆しがある中で、
ここまで企業のマーケティングが進んでいる中で、
やっぱり自治体は遅れている。
企業も生きてかなきゃいけないけど、
自治体は消滅するって言われているからね。
企業と同じようにサバイヴしていかなきゃいけない。
でも、この筋の話って自治体は
主体的にやらないだけではなく、
提案したところで、そりゃ無理だよねって
ことになるんだろうなあ。

池田

どっかで成功事例をつくれば、
横へ倣えで、うちもああいうことやりたい
ってなるんだろうけどね。

竹本

そうだねえ。

池田

俺は、世の中を変えるのは
PRしかないと思っているのよ。
PRとソーシャルってすごく相性がいい。
広告をうんとうってもネットの口コミって
ほとんど増えないんだけど、PR記事に出ると増える。
PRってコンテンツだから、みんな見るし読む。
世の中の空気づくりとかムーブメントは
広告ではつくりづらくなっている。
雑誌で特集されるとか、TVの情報番組や
バラエティでも取り上げられるとか、
どんどんマスで露出するようになると、
それをみた人がソーシャルで反応して
またそこで話題になる。
良い循環ができる。

竹本

いまの地域や自治体は、西粟倉も含めて、
たまたま取材にきてくれたところをひたすら受けて、
結果的にソーシャルで話題になる。
だけど、それは来年くるかどうかわからない。

池田

それを計画的にやらなきゃいけない。
マーケティングは再現可能じゃないといけない。

竹本

意図的に狙ってやってかないといけない。

池田

そう。
そして、これから日本全土でやらなきゃいけないのは
みんなが都市にいかなくていいんじゃないか、
豊かなライフスタイルって地域にもあるんじゃないのか
それが、たまにTV番組でやられるだけじゃなくて、
そんな記事が出続けるように
メディアがメディアをよぶサイクルをまわさなきゃいけない。
いまって、ネタがショット的。企業も自治体もだけどね。
ここらへんを計画的にやらなきゃいけない。

竹本

うん。

池田

やりやすいところから成功事例をつくることだね。
でも、たとえば京都とかでやっちゃうと、
それは京都だからできたんだって言われる。
そしたら、真逆の、一見、何の特徴もない、
地域の成功事例もつくってあげないといけない。

竹本

それが戦略的にできるとすごくおもしろい。
西粟倉みたいなところは、
他の誰もやってないようなことをしていたら、
たくさん取材が来て、戦略的ではなく露出が増えたけど。
海士町だって神山町だって、そういう意味ではパッシブだね。
奇特なことを最初にやったから、メディアが来ているだけ。
そうじゃなくて、戦略的にコンテンツだしていって、
結果を出せると、ロールモデルになる。
行政もぜったいこのやり方がいいよねってなる。
だって、コストミニマムなんだよ。
金をドブに捨てずにすむ。

池田

ただ、やっぱりね、
すべての地域は救えないと思うんだ。
残念ながら。
マーケティングリサーチで、「純粋想起」って
調査対象者に何のヒントもなしに、
どのブランドを想起するか調べるやり方があるの。
例えば「シャンプー」って聞いた瞬間に、
その人が最初にどのブランドを想起するか。
一つ目にでてこない商品は目的買いされにくい。
容量増量するとか値引きとかしない限り
店頭で手に取ってさえもらえない。
だから、俺が「サーフィン」って聞いた時に、
「湘南」「千葉」のあとに
「宮崎」って想起するようになった、
それはすごく大きいことだよね。

竹本

そうだね。

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プロフィール紹介

池田 紀行 Noriyuki Ikeda

株式会社トライバルメディアハウス代表取締役社長。1973年横浜生まれ。マーケティング会社、ビジネスコンサルティングファーム、マーケティングコンサルタント、クチコミマーケティング研究所所長、バイラルマーケティング専業会社代表を経て現職。
ソーシャルメディアマーケティング、キャンペーンプランニング、ソーシャルメディア効果測定、ソーシャルメディアリスク対策、戦略PR、広報効果測定などにおいてメディア取材・寄稿、講演・セミナー講師など多数。宣伝会議、JMA(日本マーケティング協会)、JAA(日本アドバタイザーズ協会)講師。『次世代共創マーケティング』(SBクリエイティブ)、『ソーシャルインフルエンス』『キズナのマーケティング』(アスキー・メディアワークス)、『ソーシャルメディアマーケター美咲Ⅰ/Ⅱ』『ソーシャルメディア白書2012』『Facebookマーケティング戦略』(翔泳社)、『フェイスブックインパクト』(宣伝会議)など著書・共著書多数。

竹本吉輝 Yoshiteru Takemoto

1971年神奈川県生まれ。横浜国立大学国際経済法学研究科修了。外資系会計事務所、環境コンサルティング会社の設立経営などを経て、2009年、株式会社トビムシ設立。10年、ワリバシカンパニー株式会社の設立に参画。13年、株式会社東京・森と市庭を設立、代表取締役就任。専門は環境法。国内環境政策立案に多数関与。同時に、財務会計・金融の知見を加味した環境ビジネスの実際的、多面的展開にも実績多数。立法(マクロ政策)と起業(ミクロ市場)で双方の現場を知る。