志をともにするたまに会う人との話

池田紀行さんと、「地域のマーケティング」放談。

2002年に池田紀行さんが若気の至りで書いた本を読んだ竹本が、深夜に熱いラブレター(メール)を送ったことがきっかけで、「イケ」「タケ」と呼び合うともだち同士になった二人。久しぶりに会って、デジタルマーケティングの潮流から、地域のマーケティングのあり方、これからの生き方まで、ゆるく語らいました。
(この対談は2014年9月に行われました。)

第5回 KPIはサーフィン、ゴルフ、おねーちゃん

池田

よくお客さんから、
「池田さん、この新商品、口コミで広げたいんですけど」
って依頼があるんだけど、
「これってどこらへんがすばらしい商品なんですか?」
って言うと、「いや、実はね、あんまりないんです」って。

竹本

(笑)

池田

「競合他社に比べていいとこ教えてくださいよ」
「競合他社に比べて劣ってて」
「しかも価格も高いんですよ」

竹本

(笑)

池田

「だから口コミでなんとかしたいんです」
って、できるわけないだろ!みたいな。

竹本

はははは。

池田

地域も同じで。
絶対にこれは他の地域に負けないんだっていう
USP(Unique Selling Proposition;他にない独自の価値)
が明確にあるかっていうと、
残念ながら多くの場合ほとんどないわけですよ。

竹本

そういうのって
富士山ぐらいしかないって言うよね。

池田

そう。
「うちは梨がすばらしいんです!」
っていっても隣の町もだいたい梨じゃん。

竹本

隣接の気候風土だいたい同じなんだから(笑)

池田

だけどね、俺はこの前、嫁に
「宮崎に移住するってどう思う?」って聞いたの。

竹本

ほお。

池田

俺が髪の毛切ってもらってる美容師の人が
宮崎出身で、今度地元に帰ってお店を開くんだって。
それで、ふだん、俺は
最近サーフィンをはじめて、
千葉まで行くと帰りは渋滞して
3時間かかる、
ゴルフも好きだけどやっぱり行くのに1時間かかるし、
お金も一回2万円かかっちゃう。
とかいう話を、その美容師にしてるわけだ。
そしたら、その人が
「宮崎だったら、町から30分で
 ゴルフ場にもサーフィンにも行けるし、
 ゴルフも1万円以下でできるし、
 池田さん住んだら最高だと思いますよ」
なんて言うんだよ。
それ聞いたら、
「そうなのか・・・!そういえば、
 おねえちゃんかわいい、気候もいい、
 ごはんおいしい、いいな宮崎!」
って思いはじめたわけだな(笑)
で、宮崎に移住するということを、夫婦で、
たとえ実現はないにしてもね、
会話をするという段階まできたわけだよね。

竹本

それはすごい。

池田

俺は何に刺激されたかというと
サーフィンとゴルフとおねーちゃん。
KPI(Key Performance Indicators;重要な評価指標)
はそれだったわけだ。

竹本

(笑)

池田

だから俺はB1グランプリみたいに、
IターンとかUターンとか
移住を検討しているいろんな人たちの前で、
自治体が、「うちはこれがすばらしいんだ!」
ってことをちゃんと競い合えばいいと思うのさ。
「サーフィンとゴルフやってる人だったら、
 うちの地域はまじサイコ―ですよ!」って。
で、ピピっときた人が
「でも仕事はどうするの?」って言ったら、
「こんな仕事ならあります」、
「文化レベルどうなってるの?」って言ったら、
「このくらいの文化レベルです」って。
価格コムとか食べログ的に他の地域と比較して
だしてもいいかもしれない。そしたら、
「俺たちのライフスタイルだったら、
 いつか、ここ、いいな・・・」みたいになるじゃない。

竹本

うん、いいね。
イケの話を聞いていて思ったのは、
西粟倉村は「百年の森林構想」を打ち出して、
森、林業、木材加工っていうところでエッジがたっている。
メディアにも取り上げられて、関心ある人が調べると、
検索上位に来て見つけてもらいやすいと思う。
だからたしかに、ある程度顕在化している人が
ちゃんと来てくれる流れができてきているってこと。

« 前の回次の回 »

プロフィール紹介

池田 紀行 Noriyuki Ikeda

株式会社トライバルメディアハウス代表取締役社長。1973年横浜生まれ。マーケティング会社、ビジネスコンサルティングファーム、マーケティングコンサルタント、クチコミマーケティング研究所所長、バイラルマーケティング専業会社代表を経て現職。
ソーシャルメディアマーケティング、キャンペーンプランニング、ソーシャルメディア効果測定、ソーシャルメディアリスク対策、戦略PR、広報効果測定などにおいてメディア取材・寄稿、講演・セミナー講師など多数。宣伝会議、JMA(日本マーケティング協会)、JAA(日本アドバタイザーズ協会)講師。『次世代共創マーケティング』(SBクリエイティブ)、『ソーシャルインフルエンス』『キズナのマーケティング』(アスキー・メディアワークス)、『ソーシャルメディアマーケター美咲Ⅰ/Ⅱ』『ソーシャルメディア白書2012』『Facebookマーケティング戦略』(翔泳社)、『フェイスブックインパクト』(宣伝会議)など著書・共著書多数。

竹本吉輝 Yoshiteru Takemoto

1971年神奈川県生まれ。横浜国立大学国際経済法学研究科修了。外資系会計事務所、環境コンサルティング会社の設立経営などを経て、2009年、株式会社トビムシ設立。10年、ワリバシカンパニー株式会社の設立に参画。13年、株式会社東京・森と市庭を設立、代表取締役就任。専門は環境法。国内環境政策立案に多数関与。同時に、財務会計・金融の知見を加味した環境ビジネスの実際的、多面的展開にも実績多数。立法(マクロ政策)と起業(ミクロ市場)で双方の現場を知る。