志をともにするたまに会う人との話

池田紀行さんと、「地域のマーケティング」放談。

2002年に池田紀行さんが若気の至りで書いた本を読んだ竹本が、深夜に熱いラブレター(メール)を送ったことがきっかけで、「イケ」「タケ」と呼び合うともだち同士になった二人。久しぶりに会って、デジタルマーケティングの潮流から、地域のマーケティングのあり方、これからの生き方まで、ゆるく語らいました。
(この対談は2014年9月に行われました。)

第2回 マーケティングを知らないのは税金の無駄遣い

池田

さっき話したアドテクの未来って
ひとりひとりに対して、ウザがられないで
広告を受け取ってもらえるようにすることなんだ。
その人にとって必要な情報であれば、
広告じゃなくてコンテンツになるわけじゃん。
車が欲しい人が検索をしたら車の広告が出てくる、
それは有益な情報だ。
ウザがられる意味のない広告がなくなっていく。
無駄な広告予算もなくなっていく。

竹本

うん。

池田

そんな中で、
地方自治体がいまと同じような旧態依然とした
最適化をしない広告、つまり、
「うちの村はこんなにがんばっています。
 みなさんよろしくお願いしまーす。」
みたいな昔のマスと同じやり方をしていると、
当然、効率は悪いよね。
その地域に関心のない人に大量の広告予算をつぎ込み、
ドブに捨てているようなもの。
デジタルマーケティングは効果をあげること以上に、
効率をあげることに注力をしていくので、
自治体の広告予算が少ないんだったら、
なおさらデジタルシフトしていかないともったいよね。

竹本

そのとおりだね。

池田

うちもいくつか自治体とつきあいがあるんだけど、
民間企業に比べると危機感は薄い気がするよね、やっぱり・・・

竹本

(笑)

池田

戦後70年続いてきた現代マーケティングの歴史の中で
企業と自治体のマーケティングレベルって乖離してきたけど、
ここにきてさらにレベルが乖離してきていると思う。
企業のマーケティングが高度化すると、消費者もそれに慣れるわけだ。
目も耳も脳みそもどんどん学習して肥えていく。
すると、古びた自治体や行政の広告がますます効かなくなる。

竹本

少し思ったんだけど、自治体は、公益的な存在だから、
特定の個人の趣味嗜好を分析してそこにアクセスして
最適な何かをプッシュしていくという手法はとり難い。
だから、結果的にマスっぽくならざるを得なかった
んじゃないかなって思ったんだけど、どうだろう?

池田

そうだね。
災害情報とか健康・福祉の情報とか
すべての人たちに届けなければならない
公共公益性のある情報はそうだと思うんだよね。
だけど、
「うちは良い村です。遊びに来て。商品買って。」
というコミュニケーションは、公共性も公益性も関係ない。
マーケティングの話。
限られた予算でいかに自分の地域をアピールできるか。
だから、マーケティングを知らなければ、
税金を無駄遣いしていることになる。

竹本

なるほど。

池田

まず知ってもらうとか
興味をもってもらう段階は
広告とかPRの考え方。
そこ行ってみたい、という段階になると
ニーズが顕在化してくるから、
検索してWebサイトに来てくれるので、
そこでどう取り込むかを考えなきゃいけない。
だって、「西粟倉」とか「間伐材」を知らない人は、
絶対その言葉で検索しないでしょ。

竹本

しない。

池田

そういう人はwebサイトにはきてくれない。
ニーズが顕在化した人に来てもらう施策と、
潜在顧客を顕在化させる施策は違う。
それから、広告をみたら来てくれる人と、
広告を見ないでも来てくれる人って違う。
それから、広告を見たけど来てくれない人と、
見ても見なくても来てくれない人もいる。
どこにどのくらいの人がいるかって考え方が必要。
そして、知っても知らなくても、来てもくれない人。
この人たちにいかに広告を当てないかが大事。
マスの広告はこの人たち全部に広告がいってしまう。
だから、いくらお金をかけて
「いい村ですよー」っていっても、
そのほとんどは、来ても買ってもくれない人。
そこに広告をやってしまっているのがいま。
いかにそれらの人たちをデジタルで見える化して、
計画的に育成していくか、という考え方が
これからとても大切なんじゃないかな。

竹本

そういう戦略立案や整理を
イケは、企業に対して提供しているわけだよね。
それは地域、自治体向けにもできるんだよね。

池田

もちろん。

竹本

いろんな自治体も、
イケのところに頼んだらいいのにね(笑)
だってお金がないはずの自治体でさえ、
あまり意味のないようなキャンペーンに
何百万、何千万つぎこんで、
まさにドブに捨てているケースがよくある。

池田

それで動く職員の人件費も考えるとね。
無駄なことが多いかもね。

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プロフィール紹介

池田 紀行 Noriyuki Ikeda

株式会社トライバルメディアハウス代表取締役社長。1973年横浜生まれ。マーケティング会社、ビジネスコンサルティングファーム、マーケティングコンサルタント、クチコミマーケティング研究所所長、バイラルマーケティング専業会社代表を経て現職。
ソーシャルメディアマーケティング、キャンペーンプランニング、ソーシャルメディア効果測定、ソーシャルメディアリスク対策、戦略PR、広報効果測定などにおいてメディア取材・寄稿、講演・セミナー講師など多数。宣伝会議、JMA(日本マーケティング協会)、JAA(日本アドバタイザーズ協会)講師。『次世代共創マーケティング』(SBクリエイティブ)、『ソーシャルインフルエンス』『キズナのマーケティング』(アスキー・メディアワークス)、『ソーシャルメディアマーケター美咲Ⅰ/Ⅱ』『ソーシャルメディア白書2012』『Facebookマーケティング戦略』(翔泳社)、『フェイスブックインパクト』(宣伝会議)など著書・共著書多数。

竹本吉輝 Yoshiteru Takemoto

1971年神奈川県生まれ。横浜国立大学国際経済法学研究科修了。外資系会計事務所、環境コンサルティング会社の設立経営などを経て、2009年、株式会社トビムシ設立。10年、ワリバシカンパニー株式会社の設立に参画。13年、株式会社東京・森と市庭を設立、代表取締役就任。専門は環境法。国内環境政策立案に多数関与。同時に、財務会計・金融の知見を加味した環境ビジネスの実際的、多面的展開にも実績多数。立法(マクロ政策)と起業(ミクロ市場)で双方の現場を知る。