志をともにするたまに会う人との話

池田紀行さんと、「地域のマーケティング」放談。

2002年に池田紀行さんが若気の至りで書いた本を読んだ竹本が、深夜に熱いラブレター(メール)を送ったことがきっかけで、「イケ」「タケ」と呼び合うともだち同士になった二人。久しぶりに会って、デジタルマーケティングの潮流から、地域のマーケティングのあり方、これからの生き方まで、ゆるく語らいました。
(この対談は2014年9月に行われました。)

第1回 どこかが活性化すればどこかは過疎るよね

竹本

いま僕らは西粟倉村で
「西粟倉・森の学校」という地域商社をつくって、
ニシアワーというブランドで
コミュニケーションしていたりする。
今日はイケと、地域のコミュニケーションとか
マーケティングってどうあるべきか、
みたいな話をしたいな、と。
で、ブログの記事にさせてもらえればな、と。

池田

うん、いいよ。
目指せ30いいね!だね(笑)

竹本

(笑)
そもそも、ここ最近の
ソーシャルメディアマーケティングの業界動向と
トライバルメディアハウスの仕事、
立ち位置みたいなものを教えてほしいんだけど。

池田

そうだねえ・・・、
一言で言うと、ソーシャルメディアも含む
全てのマーケティングが
デジタルシフトしていっている。
最近、「データマネジメントプラットホーム(DMP)」が
バズワードになってるけど、
いつだれがどの商品を買ってくれたか、
その人は他のどんなwebサイトで
どんなページをどのくらい見ているか、
ソーシャルではどんなブランドにどのくらいエンゲージしていて
いろんなメディアではどんな広告を見ているのか
なんて、たくさんのデータをもとに、
コンテンツの出し分けをしたり、
広告のクリエイティブや入札価格を最適化する。
デジタルマーケティングの最終形っているのは
One to Oneマーケティングをマスレベルで展開すること。

竹本

なるほど。

池田

いままでは、企業によって、
戦略にだいぶ違いがあった。
だけど、デジタルマーケティングの最終ゴールは、
みんな同じ山の頂上をみている感じ。
あとはどういう道で頂上に行くか、
どれを最初にやるかという順番が違うだけ。
すでに花王さんとかサントリーさんとかは
かなりレベルの高い取り組みを開始しているね。

竹本

そうなんだ。

池田

例えばさ、俺らが昔よくみていた
クレアラシルのCMって最近みないでしょ。
あれはね、マーケティング予算の100%を
デジタルマーケティングに変えたんだ。
俺らがクレアラシルの広告をみないのは、
彼らが相当うまくやっているということ。
だって、俺らみたいなニキビができないおっさんに
クレアラシルの広告みせても仕方がない。

竹本

(笑)たしかに。
ターゲティングがちゃんとできてるってことだね。

池田

今度、山手線が新しくなると、
中吊りの広告は全部なくなる。
その代りにデジタルサイネージで
朝は朝マックのCM、夜は居酒屋のCMを流す。
品川にあるホテルのビュッフェの広告は、
品川駅を過ぎたらださないとか。
それにしたって、今はまだ、いつ誰がみたのか、
広告に対して反応したかどうかはわからないけど、
あと10年もすればZoffやJINSとか
普通のメガネにGoogle Glassが実装されて
わかるようになるかもね(笑)
すると、俺が山手線に乗っていて、
池田紀行は、ワインバーよりも
居酒屋のポテトピザが好きってわかっていれば、
「池田さん、次の駅のこのお店のポテトピザ美味しいよ。
ビールはいつも飲んでる一番搾りですよ」
なんて広告が出せるようになる。
そんなふうにマーケティングが
One to One化、デジタル化していく。

竹本

すごいねえ。

池田

それがここ数年の動向。
それで、うちの会社には、
ソーシャルメディアの公式アカウントやりたい、とか
デジタルマーケティングとソーシャルを融合させたい、
っていうようなお客さんもいれば、
顧客と共創したいというお客さんもいる。
その戦略のコンサルティングや実行支援をしている。
うちのドメインも市場の環境変化に応じて
少しずつ変わっていっているよ。
「ソーシャルメディアエージェンシー」だったのが
いまは「デジタルマーケティングエージェンシー」
って標榜しているし。
まだまだ修行中だけど。

竹本

ほんとにここ1、2年、
いや、出会ってから10年くらいずっと、
すっごい変わっていってるよね、
イケのやってることって。

池田

うん、われながら
うまく生き残っているなって思う(笑)

竹本

ははは。

池田

うちはマーケティング会社だから、
これから半年後一年後、
クライアントは何に困りそうか、何に悩みそうか、
世の中はどういう空気になってるかをできる限り先読みして、
「トライバルに相談すれば助けてくれる」っていう
サービスや事業ドメインに少しずつ舵を切っていく。

竹本

そこで聞きたいのが、
地域のマーケティングの話。
例えば、ある県が大手広告代理店に億単位のお金を払って
県のイメージアップのキャンペーンやって、
結局ほとんど効果がありませんでした、っていう話は
10年前にはよくあった。
いまでもたまに聞く。

池田

うん。

竹本

昔は、地方自治体も大変だとか言いながら、
どこか牧歌的でお金もあったんだと思う。
でも、いまは「消滅可能性都市」みたいな
言葉まででてきて騒がれている。
地域としては、人に来てもらいたい、
住んでもらいたい、けれども、
そもそも関心をもってもらうことが難しい。
来てもらったとしてもイメージとのギャップがあったりして
住んでもらうことも難しい。
そういう中で、地域は、地方自治体は、
どういうアプローチの可能性があるんだろう?

池田

ええとね・・・
昔タケにも話したけど、そもそも大前提として、
俺には問題意識があるのよ。
いま人口が減っていきます、
どこの地域も自然減、社会減になっちゃってます、
自然減はどうしようもない。
日本の人口が決まっている以上
どこかが活性化すればどこかは過疎るよね。
この課題はどう解決するんだろう?

竹本

うん、わかる。

池田

みんな、自分の関与している地域は
活性化させたいじゃん。
ものを売りたい、観光客や移住定住者を増やしたい。
でも、どこかが増えればどこかは減る。
観光も、ひとりあたりのレジャーやエンターテイメントの
予算がこれから2、3倍にならない限り、
どこかで桃狩りをしたら、どこかでいちご狩りは
しなくなっちゃうってことだよね。
これはどう考えたらいいんだろう、と思う。

竹本

うん。

池田

という大前提はあるんだけど、
マーケティング的な立場から言うと・・・。

次の回 »

プロフィール紹介

池田 紀行 Noriyuki Ikeda

株式会社トライバルメディアハウス代表取締役社長。1973年横浜生まれ。マーケティング会社、ビジネスコンサルティングファーム、マーケティングコンサルタント、クチコミマーケティング研究所所長、バイラルマーケティング専業会社代表を経て現職。
ソーシャルメディアマーケティング、キャンペーンプランニング、ソーシャルメディア効果測定、ソーシャルメディアリスク対策、戦略PR、広報効果測定などにおいてメディア取材・寄稿、講演・セミナー講師など多数。宣伝会議、JMA(日本マーケティング協会)、JAA(日本アドバタイザーズ協会)講師。『次世代共創マーケティング』(SBクリエイティブ)、『ソーシャルインフルエンス』『キズナのマーケティング』(アスキー・メディアワークス)、『ソーシャルメディアマーケター美咲Ⅰ/Ⅱ』『ソーシャルメディア白書2012』『Facebookマーケティング戦略』(翔泳社)、『フェイスブックインパクト』(宣伝会議)など著書・共著書多数。

竹本吉輝 Yoshiteru Takemoto

1971年神奈川県生まれ。横浜国立大学国際経済法学研究科修了。外資系会計事務所、環境コンサルティング会社の設立経営などを経て、2009年、株式会社トビムシ設立。10年、ワリバシカンパニー株式会社の設立に参画。13年、株式会社東京・森と市庭を設立、代表取締役就任。専門は環境法。国内環境政策立案に多数関与。同時に、財務会計・金融の知見を加味した環境ビジネスの実際的、多面的展開にも実績多数。立法(マクロ政策)と起業(ミクロ市場)で双方の現場を知る。