志をともにするたまに会う人との話

池田紀行さんと、「地域のマーケティング」放談。

2002年に池田紀行さんが若気の至りで書いた本を読んだ竹本が、深夜に熱いラブレター(メール)を送ったことがきっかけで、「イケ」「タケ」と呼び合うともだち同士になった二人。久しぶりに会って、デジタルマーケティングの潮流から、地域のマーケティングのあり方、これからの生き方まで、ゆるく語らいました。
(この対談は2014年9月に行われました。)

第3回 ちゃんとやれている地域なんてほとんどない

竹本

さっきのイケの問題意識、
「どっかが活性化すればどっかは過疎るよね」
っていう話だけど、
トビムシは、自分たちが関わっている地域だけを
活性化させようとしているわけではなくて、
総体として、都市から地域っていう流れをつくる、
いや、それもあくまで現象でしかないな、
自立的にやってける、「自治」の在る地域を
少しでも増やしたい、それに前向きに関わりたい、
って思っていて。
都市に人口が集中しすぎているっていうのは
豊かじゃないし、サステナブルじゃないよね。
実際、地域の若者が、
良い学校にいって良い企業に勤めたい、
そのために都市にいく、
すると、マクロ的傾向としての
晩婚化少子化の渦@都市、
ストレス過多の渦@都市、に巻き込まれてしまう。
結果的に、地域から都市、都市一極集中って、
地域の個々の家系にとっても、
地域全体にとっても、そして、国にとっても、
まったくポジティブじゃない。
でもちろん、まったくサステナブルじゃない。

池田

うん。

竹本

この流れは、近代の、特に後半の話。
前半は社会的要請もあったから仕方ないけど。
いまはそんな必要ないのに、幻想を抱いたまま、
地域は都市に若者を送り込んで、
で、地域も衰退して、で、都市も大変、
みたいな状況になっている。
そうじゃなくて、
地域がちゃんと地域でヒトとモノとカネを回す、
っていう「しくみ」が必要だと思う。
それは地域だけで回して自己完結することを
目的とするわけじゃなくって。
回せるところはなるべく地域内で回して、
そうでないところは他の地域と、あと都市とも連携する。
そんな構造をつくることで、地域に多様性が残って、
ひいては国の多様性が担保される。
それは、結果的に国の持続性を高めることになる
ので、そのほうがいいよね、っていう。
これがトビムシの仮説。

池田

なるほど。

竹本

日本の人口だって、
明治のはじめから今まで4倍に増えてる。
それが国全体でみてどうかって話もあるけど、
いまの総人口と人口動態が、地域にとって
サステナブルじゃないのは間違いない。
地域は、ちゃんと若者が出ていかないように、
出て行ったとしてもちゃんと帰ってくるように
地域のポテンシャルを高めて、そして、
そういうポテンシャルをもった地域なんだ
っていうコミュニケーションを
きちんとしていかなきゃいけないよね、
って思ってる。
これが、イケの問題意識への
社会的な解ではなくて、トビムシなりの解ね。

池田

うん。

竹本

そういう意味で、
ちゃんとやれている地域なんてほとんどない。
結果的に人が来てくれている地域もあるけど、
さっきのマーケティング的な意味で、
積極的にターゲットを絞って戦略的に何かして、
これだけ人が来てくれています、
結果出せてる、なんていう地域はない。

池田

でも、東国原さんがいた時の宮崎県とか、
今だと、熊本県の「くまモン」とかあるよね。

竹本

うん、マンゴーみたいな「モノを売る」
という意味では、たしかに露出が増えることで、
効果があると思う。
でもそれで、宮崎に行きたい、住みたい
という人がどれだけ増えるかっていうと、
東国原さん的なアプローチでは難しいかな
って思っているんだよね。

池田

まあ、そうだね。

竹本

地域がサステナブルであるために、
人に来てもらいたい、住んでもらいたい、
そのためには、家も仕事もないといけないよね。
そうなると、仕事って大事だよね。
その仕事って、
かつての「工業団地つくって工場誘致」とかじゃなくて。
もちろんそういう話もあってもいいんだけど、
海外に工場を移した方がすぐに回収できる
ってなったらすぐにその地域からなくなっちゃう、
そういうもので人を集めるっていまは難しい。
ってなってくると、
そこに根付いた産業を興していかないとつらいよね。
だから、労働集約的で、地域にある資源を、
マテリアルとしてもエネルギーとしても、使える
林業・木材加工業だっていうのが、ひとつの仮説。

池田

うん。

竹本

そういうことで、西粟倉村は
林業でがんばっていこうとしてるんだけど。
地方自治体は、例えば、トライバルにお願いするなどして、
もちろんトライバルである必要は全然ないけど(笑)
さっきのマーケティング的なことを
きちんとやっていくべきだと思うんだ。
西粟倉村はたまたま僕らが民間の立場で
ニシアワーというブランドでやっているけど、
自治体こそコミュニケーションやマーケティングを
戦略的体系的に考えてやっていくべきだと思う。
だけど、それをやっているところも
できるところもない、って思ってしまう。

池田

ふんふん。

竹本

いや、本気でね、
さっきのイケの話を聞けば聞くほど、
地方自治体こそやるべきだって思うの。

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プロフィール紹介

池田 紀行 Noriyuki Ikeda

株式会社トライバルメディアハウス代表取締役社長。1973年横浜生まれ。マーケティング会社、ビジネスコンサルティングファーム、マーケティングコンサルタント、クチコミマーケティング研究所所長、バイラルマーケティング専業会社代表を経て現職。
ソーシャルメディアマーケティング、キャンペーンプランニング、ソーシャルメディア効果測定、ソーシャルメディアリスク対策、戦略PR、広報効果測定などにおいてメディア取材・寄稿、講演・セミナー講師など多数。宣伝会議、JMA(日本マーケティング協会)、JAA(日本アドバタイザーズ協会)講師。『次世代共創マーケティング』(SBクリエイティブ)、『ソーシャルインフルエンス』『キズナのマーケティング』(アスキー・メディアワークス)、『ソーシャルメディアマーケター美咲Ⅰ/Ⅱ』『ソーシャルメディア白書2012』『Facebookマーケティング戦略』(翔泳社)、『フェイスブックインパクト』(宣伝会議)など著書・共著書多数。

竹本吉輝 Yoshiteru Takemoto

1971年神奈川県生まれ。横浜国立大学国際経済法学研究科修了。外資系会計事務所、環境コンサルティング会社の設立経営などを経て、2009年、株式会社トビムシ設立。10年、ワリバシカンパニー株式会社の設立に参画。13年、株式会社東京・森と市庭を設立、代表取締役就任。専門は環境法。国内環境政策立案に多数関与。同時に、財務会計・金融の知見を加味した環境ビジネスの実際的、多面的展開にも実績多数。立法(マクロ政策)と起業(ミクロ市場)で双方の現場を知る。