Organic その構造として本質的な

先日、僕の大好きなタオル屋さん、池内タオル改めIKECHI ORGANICが、東京・南青山にお店を出した。満を持して、ということでは決してなく。同社社長の池内さんご自身が、何よりも誰よりも待ち焦がれていた、その優しく素敵なタオルを誰もが体感できる、優しく素敵な場所。が、骨董通り沿い、交差点の信号を見上げたその先に、淡い橙にイニシャルの「I」を白く灯し在った。池内さん、こういう空間を創りたかったんだなぁ。交差点からその外観を眺めみるだけで、花粉症の影響か、涙が出そうになる。光景。IKEUCHI ORGANICにとっての one giant leap、大きくも着実な一歩。

そんなタオル屋さん、池内さんとはじめて出会ったのは、4年前の夏、鎌倉投信「結い2101」第1回受益者総会、その登壇者控室だった。池内さんのことは、鎌倉投信の新井さんからよくよく聞き及んでいたため、とても初対面とは思えないほど、僕は、目の前の優しそうなおじ様に親近感を抱いていた。がゆえ、会うやいなや、新井さんから仕入れた事前情報を元に、オーガニックコットンをはじめとする環境コンシャスなモノづくりのことをいくつか質問した。すると、「いい製品をつくってるんであって、環境にいい製品をつくってるわけじゃありません」的な(一見、シニカルな)応えが返ってきてビックリ。その後、ご一緒したパネルディスカッションでも、「マーケティング上いいから(売れるから)環境に優しいタオルをつくっているんです」と(あくまで)淡々と話したりする。けれど、池内さんご本人は、PETボトルは年間で5本も飲まない(実際、深夜まで一緒に呑んだ後、宿の前の自販機で僕がミネラルウォーターを購入していると、池内さんは、「なんで、缶入りの水は売ってないんだ!」と憤慨しながら缶のアイスコーヒーを買っていた)。タンザニアからの帰国直後にお会いすると、現地の農家さんから(安心安全な就労環境を整備提供していることや井戸を掘りつくることに)感謝されたことを想起し、涙を浮かべながら、「ソーシャルビジネス云々などを霞ヶ関の会議室で議論する意味も暇もない」と熱く語られもする。そう、ホントは誰よりも、その素材やエネルギーの在り様、自らの製法(における環境負荷低減)に強い拘りを抱いているんだ。それらもひっくるめて、「いい製品(タオル)」をつくっているんだ。
池内さんは云う、「弊社製品はオーガニックの比率が高いですが、だから環境に優しいかというとそういうことではありません。池内タオルにとって環境にやさしいというのは品質が長く維持されることを意味します」と。そして続ける、「有機農法で綿を育ててくれたアグリカルチャーや製品を買ってくれた人が環境に優しい」と。僕は確信する。このことこそが、まさに、本来的な意味における「ORGANIC」なんだ、と。最終製品のつくり手がオーガニックを標榜するだけでなく、最終購買者が自らのライフスタイル(時にLOHAS)を喧伝するだけでもない。社会全体、みなが関わり得るカタチで、実際にみなが関わるように、ものづくりを通じたあるべき社会形成を為す、営み。ソーシャルスタイルとしての営為。それこそが、「ORGANIC」なんだ。と。
愛媛松山。池内さんの大好きなワインバーで呑んでる時のこと。「いままでやりたくてもやれなかったこと、いっぱいやるよ。やりますよ。ぜったいに。」と、子供のように宣言する池内さんの表情に引き込まれながら、その多くを理解する。ソーシャルスタイルとしての営為、その起点は、たったひとりの断固たる意思に基づくブレのない行動なんだ。と。

追伸 この度は、その優しく素敵な空間に、ユカハリ・コグチタイルをご利用いただき、本当にありがとうございました。全体に適うよう、優しく素敵に仕上げていただけたことに、心よりお礼申し上げます。

画像提供:IKEUCHI ORGANIC 株式会社