ハルレヤ Here I am, so let’s dance…

2014年3月11日。僕は飛騨の地に在った。前日までの降雪が嘘のように晴れ渡り、トンネルを抜けたそこは、雪の白さと空の青さからなる二色の世界だった。
久しぶりに提携先の製箸工場へ赴くと、フロアをシェアするNPO法人の活況が目に留まる。材料となる板、製品としての箸、やがてエネルギー(木質ペレット)となる端材が、固定的にそれでいて流動的に積まれていく。そしてそこには、障害と在る人の箸づくりに向き合う真摯な姿が。みな、何某かを抱えながら、目の前の現実に向き合い、時々前を向いて、その営みを続けている。
その後、僕は、僕たちの支援者(株主)のところへ、やはり久しぶりに赴いた。同氏の経営する会社は増収増益を続け、過去最高益を出しながら、さらに年度末の活況の真っ只中に在った。同氏の明るく優しく温かい言葉に感謝の心持ちを抱きながら、そこで働く社員の生き生きした空気に包まれながら、その部屋を出ようとする刹那、同氏の家族が大変な病を患っている、という話しが。明るく優しく温かい表情からは読みとること難しい、いつもは声にならない声で。みな、何某かを抱えながら、目の前の現実に向き合い、時々前を向いて、その営みを続けている。

2011年3月11日。その日以降、なんどと被災の地へ赴くと、そこには、そこに在る人々にとって、抱えきれない、とても向き合えないほどの現実が、ただただ在った。それは、再び訪れても在り、そしていまも在る。それでも必ず、前へと動きだす人がいる。動いている人がいる。大切な大切な家族のため、その地に在ったモノコトをつなげていくため、思いをつなげていくために、決して言い現すことのできない想いを胸に、その地に向き合い、その地の人に向き合いながら。時々前を向いて。

福島県出身の小説家古川日出男氏が中心となりはじまった、朗読劇「銀河鉄道の夜」。宮澤賢治の不朽の名作を同氏がオリジナル脚本に仕上げ、2011年の聖夜以降、各地で啓かれている。そこには、その強く優しい古川氏自身の朗読にそっと寄り添う、音楽家小島ケイタニーラブ氏の素朴で優しい唄が在る。聴こえる。「何度だって ここから やりなおせる」。そして続く、

ハルレヤ
夢の中へ 歪な僕を許して
零れそうな夜をすべて その胸で

僕も、僕たちも、何某かを抱えながら、目の前の現実に向き合い、時々前を向いて、その営みを続けている。そしてそれは、飛騨の地でも。
先日、その飛騨の地に、ロフトワーク共同代表のふたり、諏訪光洋氏と林千晶氏が訪れた。いつも前を向いているふたり。何某かを抱えながらも、目の前の現実に向き合いながらも。いつもドキドキとワクワクと在る。そんな人たちと一緒に、そして、その地で前へと動いている人たちと一緒に、僕たちは、その地に向き合い、その地の人に向き合いながら、古くて新しい営みを為し、続けていきたい。そんな零れそうな希望を胸に。飛騨の地で過ごした2014年3月11日という日に。

画像出典:http://www.hida-kankou.jp/s/news/211/