志をともにするたまに会う人との話

いとうせいこうさんと、東京と小村力の話を。

2011年2月に東京の森を考えるシンポジウムで出会ったいとうせいこうさん。
何度かラジオ番組のゲストに招いてもらい、昨年、西粟倉村でのトークショーにもおこしいただきました。
その時でたキーワードは「小村力(しょうそんりょく)」。
今日は、東京の森で事業を始めたというご報告と、「小村力革命」の話を。
(この対談は、2013年5月におこなわれました。)
photo by 井島健至

第5回 贈り物のネットワークが生まれる

竹 本

西粟倉村で廃校をオフィスにしているので、
地域に行くとよく廃校を案内されるんです。
良い廃校があるよって(笑)。
その廃校をカフェにするとかコミュティスペースにするとかもいいけど、
そもそも廃校が増え続けている構造をどうするのか。
少子高齢化の時代、どうすれば若い人が入ってくるのか。
西粟倉村でも、移住者たちが独立して宿をはじめたり、お子さんが生まれたり、
本人たちは、クリエイティブに、楽しそうな生活をしていて。
その地域がその地域らしく有り続けるためのことを、
構造的にできないのかなと思ってるんです。
そういうことができてくると、ほんとに「小村力革命」だと思うんです。

いとう

少なくとも、ここでなにかがはじまっているということを楽しげに伝えれば、
それだけで、広がっていくと思うよ。
原発依存体制から抜け出て、地方で分散型エネルギーをつくることと並行して、
いまある森をもっと活かしていこう、と。

竹 本

森っていうものがそもそも、でっかい自然エネルギーなんだ
って思ってもらいたいですね。

いとう

今だと山を見て、「ああ、豊かなものがあるな」と思うことってないよね。

竹 本

そういう意識が変わっていくといいなと思うんですよね。
小村力革命をおこなっている森とそうでないところは景色が変わってくる。

いとう

小村同士があるお祭りの時に贈与しあうとかするとおもしろいね。
いろんな豊かなものがそれぞれの村に届く。

竹 本

いいですね。贈与だから等価である必要はない。

いとう

そう、採れなかったところは何もなくてもいい。

竹 本

いま、流通が整備され、どこでも同じものが享受できるようになっている。
だけど、自立して、自分たちだけでやろうとすると、
逆に、自分たちだけではできないことがみえてくるんですよね。
だから、直接、他の地域からもらってくるようになる。贈与し合う。

いとう

そのお祭りの時には、隣の村からも人が来る。
美味しいものが食べたいから(笑)。
そんなふうに、小さな村同士の贈り物のネットワークが生まれる。
それに参加したい人がどんどん増えてくる。
小村力革命を広げていくこと、応援していきます。

おわり

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プロフィール紹介

いとうせいこう Seiko Ito

1961年東京都生まれ。作家、クリエイター。早稲田大学法学部卒業後、出版社の編集を経て、音楽や舞台、テレビなどの分野でも活躍。1988年、小説『ノーライフキング』でデビュー。1999年『ボタニカル・ライフ』で第15回講談社エッセイ賞受賞。他の著書に『ワールズ・エンド・ガーデン』、『ゴドーは待たれながら』(戯曲)、『文芸漫談』(奥泉光との共著、後に文庫化にあたり『小説の聖典』と改題)、『Back 2 Back』(佐々木中との共著)などがある。2013年『想像ラジオ』が大きな話題に。

竹本吉輝 Yoshiteru Takemoto

1971年神奈川県生まれ。横浜国立大学国際経済法学研究科修了。外資系会計事務所、環境コンサルティング会社の設立経営などを経て、2009年、株式会社トビムシ設立。10年、ワリバシカンパニー株式会社の設立に参画。13年、株式会社東京・森と市庭を設立、代表取締役就任。専門は環境法。国内環境政策立案に多数関与。同時に、財務会計・金融の知見を加味した環境ビジネスの実際的、多面的展開にも実績多数。立法(マクロ政策)と起業(ミクロ市場)で双方の現場を知る。