志をともにするたまに会う人との話

いとうせいこうさんと、東京と小村力の話を。

2011年2月に東京の森を考えるシンポジウムで出会ったいとうせいこうさん。
何度かラジオ番組のゲストに招いてもらい、昨年、西粟倉村でのトークショーにもおこしいただきました。
その時でたキーワードは「小村力(しょうそんりょく)」。
今日は、東京の森で事業を始めたというご報告と、「小村力革命」の話を。
(この対談は、2013年5月におこなわれました。)
photo by 井島健至

第2回 簡便に利便性を捨てて、クリエイティブに。

いとう

あえて利便性を落とす、ということも大事なわけでしょ。
西のこっち側にくれば、捨てられる利便性がある。
時間はどのくらいかかるの?

竹 本

新宿から1時間半くらいですね。しかも1000円ちょっとで。
非日常ではなく、日常空間として行くことができるので、
暮らし方を考えるのにとてもよいと思います。
都市部では待機児童の問題なんかもありますが、
子育てを真剣に考えている親御さんに来ていただければ、
こっちの方が意外と豊かに暮らせるんじゃないかと思ってもらえると思います。

いとう

「簡便に利便性を捨てることができる」ってことだね。
あとね、西粟倉村のように家具をつくっている工房ができるといいと思うよ。
西粟倉村がよかったのは、建材だけじゃなく、
クリエイティブな家具が作る人がいるってこと。
東京の場合、作る人はたくさんいるだろうし、
しかも、それは東京の木でつくることができる。

竹 本

ぜひそうしたいですね。
クリエイティブな人たちにぜひ来てほしい。
いま、東京R不動産と一緒に考えているのは、
遊び心ある建築士数十人に森に来てもらって、森と木の状態を見てもらい、
それを使って都市にどんな空間がつくれるか考えてもらう。
いまの東京の森の現状はこうだから、ということを伝えて。
制約があったほうがおもしろいんじゃないかなと。

それで、東京の森ならではの、他に取り換えがきかないような
商品ができたらいいなと思っています。
でも、まずは、遊びに来てほしいですね。
海外の人たちにも、ここもふくめて「東京」だと言っていきたい。

いとう

そうだよ、観光で高尾山とか行ってるんだからさ。

竹 本

奥多摩には、登山はもちろん、ラフティングやツリークライミングなど、
自然を満喫できるエンターテイメント空間がある。
ごくごく一般の人たちにも訴求しやすいと思っています。

いとう

あとさ、檜原村とか小さい地域でがんばってる地域があるから、
そういうところと一緒にやるといいよ。
東京都に頼らず小さなコミュニティでやっていく、
それこそが「小村力(しょうそんりょく)革命」。

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プロフィール紹介

いとうせいこう Seiko Ito

1961年東京都生まれ。作家、クリエイター。早稲田大学法学部卒業後、出版社の編集を経て、音楽や舞台、テレビなどの分野でも活躍。1988年、小説『ノーライフキング』でデビュー。1999年『ボタニカル・ライフ』で第15回講談社エッセイ賞受賞。他の著書に『ワールズ・エンド・ガーデン』、『ゴドーは待たれながら』(戯曲)、『文芸漫談』(奥泉光との共著、後に文庫化にあたり『小説の聖典』と改題)、『Back 2 Back』(佐々木中との共著)などがある。2013年『想像ラジオ』が大きな話題に。

竹本吉輝 Yoshiteru Takemoto

1971年神奈川県生まれ。横浜国立大学国際経済法学研究科修了。外資系会計事務所、環境コンサルティング会社の設立経営などを経て、2009年、株式会社トビムシ設立。10年、ワリバシカンパニー株式会社の設立に参画。13年、株式会社東京・森と市庭を設立、代表取締役就任。専門は環境法。国内環境政策立案に多数関与。同時に、財務会計・金融の知見を加味した環境ビジネスの実際的、多面的展開にも実績多数。立法(マクロ政策)と起業(ミクロ市場)で双方の現場を知る。