志をともにするたまに会う人との話

いとうせいこうさんと、東京と小村力の話を。

2011年2月に東京の森を考えるシンポジウムで出会ったいとうせいこうさん。
何度かラジオ番組のゲストに招いてもらい、昨年、西粟倉村でのトークショーにもおこしいただきました。
その時でたキーワードは「小村力(しょうそんりょく)」。
今日は、東京の森で事業を始めたというご報告と、「小村力革命」の話を。
(この対談は、2013年5月におこなわれました。)
photo by 井島健至

第4回 それは消費ではない

いとう

その小さなコミュニティ同士で交換がおこなわれるといいね。
近代が失ってしまった「贈与」があるといい。
付加価値を付けて高く売るとかではなく、
「贈与」を加える。

竹 本

ニシアワーユカハリタイルというエンドユーザー向けの
商品があるんですが、クレームがきたことはないそうです。
工務店さんに卸そうとすると、
無垢材はクレームになるので扱いたくないとなる。
だけど、自分たちで敷いているので、リスクもわかっている
自分たちがやったほうが喜びになって、愛着につながっている。

いとう

まさに好循環だね。

竹 本

近代の工業製品的な、効率や、歩留まりや、時間、
そういうものに木をあわせていくのではなく、
木という素材の良さを伝えていくやり方、が必要だと思っています。

いとう

もちろん、いまの経済をすべて否定することはできないけど
別の経済があるというレイヤーをつくっていく必要がある。
小村力のネットワークで別のレイヤーをつくっていく。
結局「役に立つよろこび」だと思うんだよ。
役に立てる人が役に立つことを贈与している、
それで自分たちも木とか景色とかを得ることができる。
役に立つこと自体がうれしい、それ自体が目的になる。
自分たちは森のために人のために役に立つことができる、
そういうものを提供しているプロジェクトなのだ、と言える。
それは消費ではない。
消費ではないやり方でなにかを売ることができる。

竹 本

そのとおりです。
それを、小さな小さな動きでいいので、
かたちにしたいし、見せたい。

いとう

東京でこれが成功してくれると、
他の地域にとってもいいモデルケースになるんじゃないかな。

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プロフィール紹介

いとうせいこう Seiko Ito

1961年東京都生まれ。作家、クリエイター。早稲田大学法学部卒業後、出版社の編集を経て、音楽や舞台、テレビなどの分野でも活躍。1988年、小説『ノーライフキング』でデビュー。1999年『ボタニカル・ライフ』で第15回講談社エッセイ賞受賞。他の著書に『ワールズ・エンド・ガーデン』、『ゴドーは待たれながら』(戯曲)、『文芸漫談』(奥泉光との共著、後に文庫化にあたり『小説の聖典』と改題)、『Back 2 Back』(佐々木中との共著)などがある。2013年『想像ラジオ』が大きな話題に。

竹本吉輝 Yoshiteru Takemoto

1971年神奈川県生まれ。横浜国立大学国際経済法学研究科修了。外資系会計事務所、環境コンサルティング会社の設立経営などを経て、2009年、株式会社トビムシ設立。10年、ワリバシカンパニー株式会社の設立に参画。13年、株式会社東京・森と市庭を設立、代表取締役就任。専門は環境法。国内環境政策立案に多数関与。同時に、財務会計・金融の知見を加味した環境ビジネスの実際的、多面的展開にも実績多数。立法(マクロ政策)と起業(ミクロ市場)で双方の現場を知る。