志をともにするたまに会う人との話

ロフトワーク林さんと、わくわくする企みごと。

2013年、奥多摩の森を舞台に事業をはじめた株式会社東京・森と市庭。そこにいちばん最初に遊びに来てくれたのは、ロフトワークというちょっとへんな会社でした。その夏の合宿の様子はロフトワークさんのブログをご覧いただくとして。それから数カ月後、奥多摩の紅葉真っ盛りの秋、ロフトワーク共同創業者の林千晶さんを訪ねました。トビムシとロフトワークという、ひと言では説明しづらい会社の代表同士が、合宿のこと、お互いのこと、これからのことを話しました。
(この対談は2013年11月におこなわれました)
画像提供:ロフトワーク

第3回 パブカフェと割り箸

竹 本

そう、それで、話を戻すと、
あのときから、絶対一緒にできると言いながら、
でもお互い忙しかったりするし、
これをやろうと決めないとなかなか動かないよね。
せっかくだから、今日、なんか決められるといいよね。

うん。ひとつは、今度新しくファブカフェができるから、
そこに、奥多摩の木材をもってきたい。
でも、単純にものとして消費するんじゃなくて、
奥多摩の森とどうつながるかっていうのを考える
プログラムをつくりたいなあって思う。

竹 本

うん、それはぜひ。

あとは、うちの、ロフトワークの子を、
トビムシさんに出向させたい。

竹 本

なんと・・・、
それ、ものすごくいいかも(笑)

だってさ、お互いそれぞれやってることを知ると、
すっごい可能性広がると思うんだよね。
トビムシさんってクリエイティブの力を信じてるじゃない?
そのクリエイティブの力が今はおもに木材を使った
ものづくりっていうところにあるけど。
webとか空間とか、クリエイティブの力って広いから、
もっともっといろんなやり方ができる。

竹 本

うん、できると思う。

逆にロフトワークの子たちにとっては、
わりと頭で考えちゃうところがあるから、
森に入ったり、地域の人と交流したりするのが、
ファシリテーション力を実戦で鍛えることになったりして、
すっごくいいと思うの。
そういう、交換留学プログラムやりたい。

竹 本

それってとってもおもしろいし、プロダクティブだし、
それ自体、企業のありようを変えることにもつながる。

もしかすると、一定期間ずっと行ってるっていうより、
週に何日だけとか行き来するとかがいいかもしれない。

竹 本

これは、日本の地域に多くある問題でもあって、
奥多摩だとリバーカヤックのガイドの仕事があるんだけど、
シーズンオフの冬には、みなかみのスキー場とか
別の場所で働きにいってたりする。
だけど、林業は秋が「切り旬」と言われるように、秋冬がメインだし、
また、これからは宿もやりたいと思ってる。
そうやって、色んな仕事を複合的に組み合わせることで、
冬の間は奥多摩の外に出ていた人たちに、
奥多摩で仕事をしてもらえる。
もちろん、奥多摩の中で完結するだけじゃなくて、
東京の中で時期によって、行ったり来たりするとか
色んなパターンがあっていいと思う。
そういう働き方ってロフトワークの人たちに合ってそう。

うん、うちの子たちだったら、
奥多摩にいる間に、勝手におもしろい企画すると思う。
働き方も変わるし、いいね。

竹 本

まずは、ファブカフェに奥多摩の木材を提供させてもらう。
わかりやすい、手触り感のあるところからやっていきたい。
ロフトワークのことを知らない人に説明するのに、
まず、「ファブカフェ知ってる?」って聞いて、
「あー、知ってる知ってる。」って言うと、
「あれやってる会社。」っていう説明が一番簡単だから(笑)

それは竹本さんが、
「お父さんの会社はなにしてるの?」って聞かれて、
「割り箸つくってる」っていうのと同じじゃない(笑)
あれ、私ねえ、すごく共感しちゃった(笑)
「本当にやってること」は説明するのが難しすぎて、
一番わかりやすいやってることはお箸作ってることっていう。
私も「お母さんはカフェをやってる」って言われて。
しかも、うちの母親が「パブカフェって言うらしい」って(笑)

竹 本

ははは、「パブカフェ」(笑)

ある程度年齢が高い人はほぼ確実に「パブカフェ」になるね。
それは、もう受け入れなきゃいけないと思ってる(笑)

竹 本

まあ、一番わかりやすいコラボレーションは、
トビムシが森から木をだして、
ロフトワークのファブカフェでつくってもらって、
っていうことかな。
その背景には説明しづらいおもしろ味があるんだけど。

あとは、ファブカフェでやるだけでもなく、
2万人のクリエイターのネットワークがあるから、
木材加工のコンテストやワークショップとかできるといいよね。

竹 本

それもおもしろい。
実際、僕らも、みなさんが合宿で
つくってくれたものをみて、考えることがたくさんあって。
つくりたいものをつくるだけじゃなく、
普通だったら使わない材料でつくる。
つくるプロセスで発生する端材でつくったり、
すでにある使われなくなっているものをリデザインする。
クリエイターなら色々できるでしょ。
それに、木っていう素材自体がいろんな制約があって、
遊びどころがたくさんある。

うんうん。

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プロフィール紹介

林千晶 Chiaki Hayashi

ロフトワークの共同創業者、代表取締役。2000年に創業したロフトワークでは、16,000人が登録するクリエイターネットワークを核に、Webサービス開発、コンテンツ企画、映像、広告プロモーションなど信頼性の高いクリエイティブサービスを提供。学びのコミュニティ「OpenCU」、デジタルものづくりカフェ「FabCafe」などの事業も展開している。またクリエイターとのマスコラボレーションの基盤として、いち早くプロジェクトマネジメント(PMBOK)の知識体系を日本のクリエイティブ業界に導入。2008年『Webプロジェクトマネジメント標準』を執筆。米国PMI認定PMP。現在は、米国NPOクリエイティブ・コモンズ 文化担当、MITメディアラボ 所長補佐も務める。
1971年生、アラブ首長国育ち。早稲田大学商学部、ボストン大学大学院ジャーナリズム学科卒業。1994年に花王に入社。マーケティング部門に所属し、日用品・化粧品の商品開発、広告プロモーション、販売計画まで幅広く担当。1997年に退社し米国ボストン大学大学院に留学。大学院卒業後は共同通信NY支局に勤務、経済担当として米国IT企業や起業家とのネットワークを構築。2000年に帰国し、ロフトワークを起業。

竹本吉輝 Yoshiteru Takemoto

1971年神奈川県生まれ。横浜国立大学国際経済法学研究科修了。外資系会計事務所、環境コンサルティング会社の設立経営などを経て、2009年、株式会社トビムシ設立。10年、ワリバシカンパニー株式会社の設立に参画。13年、株式会社東京・森と市庭を設立、代表取締役就任。専門は環境法。国内環境政策立案に多数関与。同時に、財務会計・金融の知見を加味した環境ビジネスの実際的、多面的展開にも実績多数。立法(マクロ政策)と起業(ミクロ市場)で双方の現場を知る。