ロフトワーク林さんと、わくわくする企みごと。
2013年、奥多摩の森を舞台に事業をはじめた株式会社東京・森と市庭。そこにいちばん最初に遊びに来てくれたのは、ロフトワークというちょっとへんな会社でした。その夏の合宿の様子はロフトワークさんのブログをご覧いただくとして。それから数カ月後、奥多摩の紅葉真っ盛りの秋、ロフトワーク共同創業者の林千晶さんを訪ねました。トビムシとロフトワークという、ひと言では説明しづらい会社の代表同士が、合宿のこと、お互いのこと、これからのことを話しました。
(この対談は2013年11月におこなわれました)
画像提供:ロフトワーク
第1回 ただの多摩の会社じゃないぞ

今日はよろしくお願いします。
よく考えたら、まだ会って半年経ってないよね。

そうね。今年の6月くらい?
奥多摩での合宿の前だから。

株式会社東京・森と市庭は、
事実上6月末の会社立ち上げで。
4月末に登記をして、6月末の増資で会社の体裁を整えた。
だからまだ増資も実行できていない、
本格的に会社としてはじめていく前の段階で、
合宿の相談をしてもらったことに。

へー、そんなタイミングだったんだ。

僕らも、奥多摩で事業をはじめるにあたって、
地域のいろんな関係者から期待されるところがあって。
もちろん、何となくではなく、西粟倉での実績があるから
多少なりとも期待してもらってるんだけど、
やっぱり、まだ会社として体をなしてないところで、
何ができるの?本当にできるの?と思われてるところもあって。
そうした期待と疑問に、短期的に応える何かがほしかった。
そんなタイミングで、ロフトワークさんにご相談いただいたので、
僕はその場で、「できます、もちろん」と言ったのを覚えてます(笑)

奥多摩で合宿することになったそもそもは、
たましん(多摩信用金庫)の部長さんと
お会いする機会があったんですよね。
信金の人と会っても、お金借りたいわけじゃないし、
しかも、渋谷にある会社だから多摩とは関係ないし。
なに話そうかな、なにか接点あるのかなーって思ってて。
でも、部長さんが
「多摩にはおもしろい会社も、素敵な場所もいっぱいあるんですよ」
って言ってくれて、それにびびびっときて、
「いま合宿の場所探してるんだけど」って話をしたんです。
「そしたら、いいとこありまっせ」って(笑)

大阪商人のように(笑)

そう、それで紹介してもらったのが、
奥多摩で、東京・森と市庭って会社をつくったトビムシさん。
でも、私トビムシさんのこと全然知らなかったから、
まずは合宿係の子が会いに行って。戻ってきたら、
「すっごいおもしろいから、千晶さん会った方がいいぞ」って
言われて。それで竹本さんに会って話を聞いたら、
「これは、ただの多摩の会社じゃないぞ!」って思った。

(笑)

いや、ほんとに。
その時、竹本さんから聞いた話、
森が滅びれば都市も滅びるとか、
逆に、都市が変われば森が変わる、とか。
それから私も人に言うくらい、感動しちゃって。
森と都市の関係性を再構築するっていうのに、
本当に共感した。
私たちが考えるイノベーションっていうのは、
新しいものをつくるんじゃなくて、
そのままじゃ機能しなくなったものをつなげなおしたり、
価値を再創造するものだと思ってるのね。
すでにあるものをリ・デザインすることが
すっごく大切だと思ってて。
だから、竹本さんのこと、「仲間」だと思った。

今って、一旦、戦争でほとんどのものがなくなって、
その後、本当にがんばって、いろんなものをつくってきて、
その結果として、たくさんのものがストックされたでしょ。
これ以上まだなにかつくって積むのかよって思うんです。

そう、今までは、それを壊してまたつくればいい、だったけど、
これだけストックしてきたものに、どう価値を見いだせるか、が
これからの私達のチャレンジだと思う。

うん、「わくわく感」って言うのかな。
これまでの高度経済成長期の新しいもの、
たとえば、ニュータウンとかショッピングセンターとか、
それができるときは、わくわくした。
でも、今、その時代を越えてきた僕らも、
それを知らない若い人たちも
新しい大きくてきれいなものにわくわくしないでしょ?

そうそう、しないの。全然しない。
プロフィール紹介
林千晶 Chiaki Hayashi

ロフトワークの共同創業者、代表取締役。2000年に創業したロフトワークでは、16,000人が登録するクリエイターネットワークを核に、Webサービス開発、コンテンツ企画、映像、広告プロモーションなど信頼性の高いクリエイティブサービスを提供。学びのコミュニティ「OpenCU」、デジタルものづくりカフェ「FabCafe」などの事業も展開している。またクリエイターとのマスコラボレーションの基盤として、いち早くプロジェクトマネジメント(PMBOK)の知識体系を日本のクリエイティブ業界に導入。2008年『Webプロジェクトマネジメント標準』を執筆。米国PMI認定PMP。現在は、米国NPOクリエイティブ・コモンズ 文化担当、MITメディアラボ 所長補佐も務める。
1971年生、アラブ首長国育ち。早稲田大学商学部、ボストン大学大学院ジャーナリズム学科卒業。1994年に花王に入社。マーケティング部門に所属し、日用品・化粧品の商品開発、広告プロモーション、販売計画まで幅広く担当。1997年に退社し米国ボストン大学大学院に留学。大学院卒業後は共同通信NY支局に勤務、経済担当として米国IT企業や起業家とのネットワークを構築。2000年に帰国し、ロフトワークを起業。
竹本吉輝 Yoshiteru Takemoto

1971年神奈川県生まれ。横浜国立大学国際経済法学研究科修了。外資系会計事務所、環境コンサルティング会社の設立経営などを経て、2009年、株式会社トビムシ設立。10年、ワリバシカンパニー株式会社の設立に参画。13年、株式会社東京・森と市庭を設立、代表取締役就任。専門は環境法。国内環境政策立案に多数関与。同時に、財務会計・金融の知見を加味した環境ビジネスの実際的、多面的展開にも実績多数。立法(マクロ政策)と起業(ミクロ市場)で双方の現場を知る。